「Chameleon Tour 2022 」開催決定!

 
 

3.16 SAT 心斎橋 JANUS(バンドセット)
4.8 FRI  新栄 RADSEVEN
4.10 SUN 大塚 MEETS <追加公演>
4.14 THU 広島 ALMIGHTY
4.24 SUN 京都 someno kyoto
4.28 THU 神戸 VARIT.(バンドセット)
4.29 FRI 岡山 城下公会堂 <追加公演>

 

そのままで何にでもなれるのさ 君も僕も――
ストレートなのにカラフル、
実力派〝カメレオン〟情熱を歌う。

Chameleon
2021.12.8(水)リリース

  1. 兄弟 Ⅱ

  2. 最低条件

  3. ハンドクラフトラジオ

  4. room 501

  5. ノスタルジークラムジー

  6. 寂しさは夜のせい

  7. ライブハウスブレイバー

  8. 生まれて死ぬまでの間に

(全8曲)

LS-008
lemon syrup / NEW WORLD RECORDS
(レモンシロップ ・ニューワールドレコーズ)

 

「アルバムは自分が持ってる歌の技術を全部出し切りました。優しく歌ったり、情熱的に歌ったり。そもそも今回は僕がこれまで培ってきた音楽を出し惜しみせず、全部詰め込みたいと思ったんです」

 
 
 

近石涼。神戸出身の25歳(12月で26歳)。

 このシンガーソングライターの二面性がずっと心に引っかかっていた。中3でバンプ・オブ・チキンに衝撃を受け、高校生になるとYouTubeにカバー動画を投稿。2014年には『SCHOOL OF LOCK』主催のライブ「閃光ライオット」コピバンステージに出場する。そんなロックで衝動的な面がある一方、大学入学後はアカペラサークルに入り、音楽理論を勉強。アカペラグループ「sus4」のリードヴォーカルとして『全国ハモネプリーグ2019』本戦に出場するなど高い評価を受ける。そこで生まれた、優しく包み込む技巧派の歌手という側面。その後、彼はソロミュージシャンの道を歩みはじめるが、そのときもロックな自分とポップな自分、どちらに足を向けるべきか迷っていた。近石涼は何を歌い、どんなアーティストとして進めばいいのか、自らのアイデンティティの獲得が急務だったのである。

 そんな彼が出した答えがこの『Chameleon』である。

 

「自分のことを『変幻自在だろ?』と自慢するのではなく、これまでは『これといった強みがないな』って否定する部分が強かったんです。でもそうした定まらない自分を肯定したかったし、同じように葛藤を抱えている聴き手も一緒に肯定できればと思ったんです」

 

 言うまでもなくカメレオンはその場に合わせて自分の色を変える“擬態”が特徴の生き物である。そこに自分を重ねて、確固たる色(=個性、主義、意見……)がないことを憂うのではなく、むしろ「なりたいものに何にでもなれる、それが自分なんだ」という事実に目を開く――本作の根底を支えているのはそんな態度だ。

 実際ここに収録された楽曲の百花繚乱ぶりはどうだろう。配信シングルとしてリリース済みの「ライブハウスブレイバー」「兄弟 II」の獰猛さ、ノスタルジックな「ハンドクラフトラジオ」、「最低条件」は一直線な疾走感が胸を打つし、「寂しさは夜のせい」はアーバン&ジャジー、さらに時空を漂う「ノスタルジークラムジー」、祈るようなピアノバラード「生まれて死ぬまでの間」、ネオソウル調の「room 501」のような曲まである。これでは二面性どころか“八曲八色”だが、ここで強調したいのは近石のヴォーカルもまた“八曲八色”であり、1曲の中でもアレンジの展開、転調、歌のタッチをめまぐるしく変えている点である。解き放たれたカメレオンは自らのポテンシャルを駆使して、瞬発的な変身を繰り返す。その集中力の高い“生”の放出が楽曲の濃度を高め、本作の味わいを深くしている。

 粒ぞろいの楽曲が並んだ『Chameleon』は近石涼という表現者が辿り着いた清々しいスタート地点である。個人的にはその達成に頬を緩めると同時に、この男、これが完成形ではないだろうという予感もある。ちなみにChameleonの語源は「khamai(小さい)+leon(ライオン)」。一匹のナイーブなカメレオンの背中が割れて、そこから黄金に光るライオンが姿を現す――本作を聴いているとそんな夢想も浮かんでくるが、それもまた近石の持つ魅力なのだろう。

 充実の一枚を、ぜひ聴いてほしいと思う。

 

1.     兄弟 II

1曲目は〈兄弟 あれから調子はどうだい?〉という語り掛けからはじまるポップトラック。シンセベースが牽引し、ストリングスやマンドリンが顔をのぞかせる“おもちゃ箱を開けたような”アレンジの上を近石の歌が疾走する。「サウンドもトリッキーで、めまぐるしく展開するところも『まさにカメレオンやな』って。それと同時に『まわりに合わせるんじゃなくて、自分のなりたい色に体の色を変えてええんやで』っていう本作の核になるメッセージも入ってる曲です」。

2.     最低条件

近石が「アルバムの芯になる曲がほしい」と思い、一番最後に作った曲。淡々としたはじまりから“エモい”サビへと突き抜けていく熱量のカーブが近石節。「サウンドはまっすぐで、僕の心に一番突き刺さるものを目指しました。一見ラブソングに見えるかもしれないけど、僕が歌い続けてる意味はこの曲に全部詰まってて……いや、全部詰められないからこれからも歌い続けていくと思います」。ラブソングの形をとりながら自問自答。カメレオンの実体がここで現れる。

3.     ハンドクラフトラジオ

ここから次々と色を変えていくカメレオン。最初の変化はノスタルジック&メロディアス。「これは自分の原点を歌った歌だから最初の方に置きたくて。詞も曲もスッと出てきた一筆書きみたいな曲。ラジオを作った経験のない人でも何かに夢中になったり、それが誰かとつながってるワクワク感があったり。そこは共感してなつかしく感じてくれると思います」。音楽に目覚めたばかり頃のキラキラした記憶。メロディメイカーとしての天分が遺憾なく発揮されている。

4.     room501

あっ!と変身に驚かされる一曲。ビートの効いたトラックに、ファルセットを駆使したセクシーなヴォーカルが乗る。「大学時代にラップ風の楽曲にトライしてた時期もあって、こういう音楽も僕のルーツなんです。編曲してくれた平畑(徹也)さんからはネオソウルっていうキーワードが出て。後半テンポが倍になるアイデアも含めて攻めたサウンドを目指しました」。めくるめく変転するアレンジに、アウトロで近石はシャウト。この振り幅、この混沌が本作の真骨頂。

5.     ノスタルジークラムジー

こちらもファルセットを多用した浮遊感あふれる一曲。「この曲はピアノで作ったんですけど、“一番気持ち悪い”コード進行を使ってイビツな美しさを表現しました。大学のアカペラサークルで学んだ音楽理論が生きた曲です」。歌詞はタイムスリップして過去の自分に出会い、新たな気付きを得る内容。〈投げかける声と同じ数 この世界に僕はいる/曖昧な姿はもとよりそのままで何にでもなれるのさ/君も僕も〉というフレーズは本作のメインテーマとなる一節。

6.     寂しさは夜のせい

本作収録曲の中でもっとも古い、大学時代に作った曲。ジャジーでアーバン。アンニュイだが情熱的。ヴォーカリスト・近石涼の魅力をもっとも堪能できる曲かもしれない。「まだ音楽的な知識がない頃に作った曲で、感性だけで一番遠くまで行けたという感覚がある曲です。今でも好きと言ってくれる人が多くて、僕のこれまでの活動の中で外せない曲だと思ったのでアルバムにも収録しました」。楽曲全体で精緻にコントロールされたスキルフルな歌いっぷりに酔わされる。

7.     ライブハウスブレイバー

自身が歌う理由を赤裸々に綴ったむき出しの楽曲。息がかかりそうな生々しい弾き語りから、ロックなバンドサウンドへと雪崩れ込む。「自分の内面を全開にした曲で、ここまで歌ってきた楽曲の種明かしでもあります。自分が本当に思っていることだから叫べるし、こうした熱量を届けるには叫ばないといけない。突き抜ける熱量を表現するにはメロディも破壊しないといけないと思ったんです」。顔を歪め、ノドを嗄らし、シャウトする。ここが近石の音楽の震源地。

8.     生まれて死ぬまでの間に

アルバムの最後を締めくくるのは、ストリングスを効かせたピアノバラード。訥々とつぶやくような歌い方から人生の深淵に手を伸ばす。「これまでで最短の時間でできた曲。ライブがある日にスマホを開いて悲しいニュースを知って。それでいたたまれなくなって、ライブハウスに行く途中に歌詞を書いて、即興で披露したんです。こみあげてくるものがあって作った曲だから、本当に思った言葉が出てると思います」。表現者としてのピュアネスを残して本作は幕を引く。