「Chameleon Tour 2022 」開催決定!
3.16 SAT 心斎橋 JANUS(バンドセット)
4.8 FRI 新栄 RADSEVEN
4.10 SUN 大塚 MEETS <追加公演>
4.14 THU 広島 ALMIGHTY
4.24 SUN 京都 someno kyoto
4.28 THU 神戸 VARIT.(バンドセット)
4.29 FRI 岡山 城下公会堂 <追加公演>
そのままで何にでもなれるのさ 君も僕も――
ストレートなのにカラフル、
実力派〝カメレオン〟情熱を歌う。
「アルバムは自分が持ってる歌の技術を全部出し切りました。優しく歌ったり、情熱的に歌ったり。そもそも今回は僕がこれまで培ってきた音楽を出し惜しみせず、全部詰め込みたいと思ったんです」
近石涼。神戸出身の25歳(12月で26歳)。
このシンガーソングライターの二面性がずっと心に引っかかっていた。中3でバンプ・オブ・チキンに衝撃を受け、高校生になるとYouTubeにカバー動画を投稿。2014年には『SCHOOL OF LOCK』主催のライブ「閃光ライオット」コピバンステージに出場する。そんなロックで衝動的な面がある一方、大学入学後はアカペラサークルに入り、音楽理論を勉強。アカペラグループ「sus4」のリードヴォーカルとして『全国ハモネプリーグ2019』本戦に出場するなど高い評価を受ける。そこで生まれた、優しく包み込む技巧派の歌手という側面。その後、彼はソロミュージシャンの道を歩みはじめるが、そのときもロックな自分とポップな自分、どちらに足を向けるべきか迷っていた。近石涼は何を歌い、どんなアーティストとして進めばいいのか、自らのアイデンティティの獲得が急務だったのである。
そんな彼が出した答えがこの『Chameleon』である。
「自分のことを『変幻自在だろ?』と自慢するのではなく、これまでは『これといった強みがないな』って否定する部分が強かったんです。でもそうした定まらない自分を肯定したかったし、同じように葛藤を抱えている聴き手も一緒に肯定できればと思ったんです」
言うまでもなくカメレオンはその場に合わせて自分の色を変える“擬態”が特徴の生き物である。そこに自分を重ねて、確固たる色(=個性、主義、意見……)がないことを憂うのではなく、むしろ「なりたいものに何にでもなれる、それが自分なんだ」という事実に目を開く――本作の根底を支えているのはそんな態度だ。
実際ここに収録された楽曲の百花繚乱ぶりはどうだろう。配信シングルとしてリリース済みの「ライブハウスブレイバー」「兄弟 II」の獰猛さ、ノスタルジックな「ハンドクラフトラジオ」、「最低条件」は一直線な疾走感が胸を打つし、「寂しさは夜のせい」はアーバン&ジャジー、さらに時空を漂う「ノスタルジークラムジー」、祈るようなピアノバラード「生まれて死ぬまでの間」、ネオソウル調の「room 501」のような曲まである。これでは二面性どころか“八曲八色”だが、ここで強調したいのは近石のヴォーカルもまた“八曲八色”であり、1曲の中でもアレンジの展開、転調、歌のタッチをめまぐるしく変えている点である。解き放たれたカメレオンは自らのポテンシャルを駆使して、瞬発的な変身を繰り返す。その集中力の高い“生”の放出が楽曲の濃度を高め、本作の味わいを深くしている。
粒ぞろいの楽曲が並んだ『Chameleon』は近石涼という表現者が辿り着いた清々しいスタート地点である。個人的にはその達成に頬を緩めると同時に、この男、これが完成形ではないだろうという予感もある。ちなみにChameleonの語源は「khamai(小さい)+leon(ライオン)」。一匹のナイーブなカメレオンの背中が割れて、そこから黄金に光るライオンが姿を現す――本作を聴いているとそんな夢想も浮かんでくるが、それもまた近石の持つ魅力なのだろう。
充実の一枚を、ぜひ聴いてほしいと思う。